2019年10月 東京国立博物館の正倉院展をレポートします
みんがです。
2019年4月30日、天皇陛下(明仁さま)が退位され、
皇太子徳仁親王さまが5月1日午前0時、新天皇に即位されました。
そして、元号が平成から令和に変わりました。
この年、東京国立博物館平成館で、天皇陛下の御即位を記念し、
御即位記念特別展『正倉院の世界-皇室がまもり伝えた美-』
が開催されました。
飛鳥・奈良時代の正倉院宝物と法隆寺献納宝物が一堂に会する貴重な展示です。
展示物は、前期と後期で一部入れ変わります。
前期展示は、令和元年10月14日(月)~ 11月4日 (日)
後期展示は、令和元年11月6日 (水)~ 11月24日(日)でした。
入場者は30万人を超えたそうです。
観覧料金は以下の通りです。
一般1,700円、大学生1,100円、高校生700円、中学生以下無料。
前期の展示物は、
「螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)」
「平螺鈿背円鏡(へいらでんはいえんきょう)」など、
後期の展示物は、
「紫檀木画槽琵琶(したんもくがのそうのびわ)」
「平螺鈿背八角鏡(へいらでんはいのはっかくきょう)」など、
天下の名香として名高い「黄熟香(おうじゅくこう)」
国宝「海磯鏡(かいききょう)」などは、通期展示されていました。
私が、東京国立博物館を訪れたのは2019年10月31日でした。
主な目的は「螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)」
の展示を見るためです。
この日、上野公園の天気は晴れ。最高気温22度。
9時30分の開館のため、9時50分頃に博物館入口に到着しましたが、
チケット売り場には約10~15分待ちの人の列、
平成館の前にはすでに30分待ちの人の列ができていました。
晴天で日差しが強かったので、並んで待っている人達に博物館の職員の方が、
日傘を無料で貸し出してくれていました(ありがとうございました)
並んでいる間に後方にはどんどん人の列がのびていきましたが、
私は、入場の際に列に並ぶ時に案内された待ち時間の目安とほぼ同じ、
30分後に入場することができました。
「正倉院の世界」は2階です。
会場は下の図ようになっています↴
部屋ごとに、テーマに沿って展示物が分けられています。
第1章 聖武天皇と光明皇后ゆかりの宝物
第2章 華麗なる染織美術
第3章 名香の世界
第4章 正倉院の琵琶
第5章 工芸美の共演
第6章 宝物をまもる
という順路となっています。
全体に混雑はしていますが、展示物によっては、人垣の少ない展示もあります。
順路は自由に見てよいことになっていたので、
先に人の少ない展示物を見てから、
残りの見ていない展示に戻って見るようにして行くのが良いと思います。
今回の一番の目的の「螺鈿紫檀五絃琵琶」の展示場所は、
「第4章正倉院の琵琶」でした。
入るとすぐに、
「紅牙撥鏤撥(こうげばちるのばち)」が展示されていました↴
「撥鏤(ばちる)」とは、象牙を紅、緑、紺などに染めて、
撥彫(はねぼり)で文様を白く浮き出させたものだそうです。
唐の時代の琵琶は、撥で演奏されていましたが、
時が経つうちに変化して、現代の中国琵琶は付け爪をして指で弾いて演奏します。
「紅牙撥鏤撥」と向い合せるように、螺鈿紫檀五絃琵琶の複製品が展示されていました。
複製品の琵琶を演奏した曲も流されていて、音を聞く事もできました。
複製品の琵琶の弦には、上皇后美智子さまが皇居内で育てられた、
日本純産種の蚕「小石丸」の糸が使われていました。
「螺鈿紫檀五絃琵琶(模造)」↴
「螺鈿紫檀阮咸(模造)」↴
*写真の物はレプリカで、写真撮影許可のコーナーで撮影しました*
模造ですが本当に精巧に作られていて、復元した職人さんの技を感じます。
本物の螺鈿紫檀五絃琵琶は、複製品の奥にありました。
このコーナーは特に人が多かったので、
展示ケースを囲んで、立ち止まらずに歩きながら見るようにと係り員の誘導がありました。
「螺鈿紫檀五絃琵琶」は、紫檀(したん)をくり抜いた本体に別の木板をあて、
玳瑁(たいまい=ウミガメの甲羅)と螺鈿(らでん=貝殻の真珠層)で装飾されています。
背面には宝相華文(ほうそうげもん)という天上に咲く花の模様が、
螺鈿と琥珀で装飾されています。
撥(ばち)を受ける部分にはラクダに乗って琵琶を演奏する人物が表されています。
シルクロードを通じて遠い異国の音楽が伝えられたことがうかがえます。
「螺鈿紫檀五絃琵琶」は世界でただ一つしか現存していないのだそうです。
唐の時代に、中国で作られて遣唐使によって日本へと渡り聖武天皇の捧げられて、
そしてこの現代にまで変わらない美しさを残しています。
正倉院は今から約1250年前に東大寺の旧境内に建てられました。
「正倉」とは倉庫のことだそうです。
正倉には聖武天皇の遺愛品などが約9000点も収められています。
聖武天皇が御崩御されたのちに、光明皇后が御冥福を祈願して
宝物を東大寺の本尊廬舎那仏(大仏)に奉献し、正倉院に収められました。
それらの宝物は、千年以上の長い時間が経っているにもかかわらず、
色あせる事なく守り伝えられて、残されていました。
「宝物を守る」という仕事についても展示がされており、
文化財や国宝を守り伝え、引き継いでいく事がどんなに大変で大切なことなのか、
あらためて知りました。
たくさんの人の技や努力や研究があって、こうしたたくさんの貴重な宝物の、
まるで当時そのままの、変わらない美しい姿を私たちが目にすることができる、
それは素晴らしい事だと思います。
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