この記事は、中国琵琶の演奏時にチャイナドレスを着用する場合に注意した方が良い点や、各デザインの特徴ごとに着用に適した環境などについて写真を使って説明しています。後半に、それぞれのチャイナドレスを購入した場所の情報も記載しました。
チャイナドレスとは
日本でチャイナドレスを指す服飾の事を、中国語では「旗袍(qi pao)」と言います。チャイナドレスというのは和製英語なのだそうです。満州人の貴族の衣装「旗装」が起源で、20世紀以降西洋の服の製法を取り入れ、女性を美しく見せる衣服として定着していきました。
チャイナドレスの元祖である「旗装」は、もともとは満州族の男性の上着で、下にズボンを履いて着用していたようです。満州族は騎馬民族で、上着の横のスリットは、馬にまたがる時に足を両側に出す為で、高い襟と前後に垂れる上着の長い裾は、防風や防寒の役割を持っていたそうです。清王朝時代に入ってから、満洲民族の旗装と漢民族の漢服の融合が進み、時代の流れとともに、現在のようなチャイナドレスとなっていきました。
チャイナドレスの正式な型は、裾はくるぶしまでの丈で、スリットの位置は膝下でしたが、1980年代頃から、政府の公式なイベントなどでも高い位置からスリットの入った女性の美しさを見せる華やかな衣装が着られるようになり、現在は多様化して、スリットのないAラインドレスやミニ丈など、様々なデザインが見られます。
スリットのあるチャイナドレス
下の写真は両サイドにスリットのあるドレスの例です↴
このデザインはシンプルで、シルエットもすっきりとして見える利点があります。身動きすると、スリットが動いて、華やかでセクシーな印象になります。パーティーなどで着用するだけであればスリットはあまり問題にならないのですが、中国琵琶の演奏をする為に着用する場合、気を付けた方がいいと思う点がひとつあります。
それは、足の肌の露出についてなのですが、演奏をする場所が、高い舞台の上になる場合に、お客様の目線が舞台の下から上に見上げるような形になるので、自分が思った以上に足が露出してしまっている事があります。特に、椅子に浅く腰掛けると、太腿の裏側が下から見えてしまいます。演奏している時に肌の露出が多すぎないか、事前に他の人に見てもらって確認しておくことをおすすめします。
下の写真の様に、演奏者とお客様の目線が平行になるような位置関係であればスリットのあるドレスで演奏しても特に問題はありません↴
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Aラインのロングチャイナドレス
下の写真は、ロング丈のAラインデザインのドレスです。襟の部分のデザインが違いますが、どちらも裾の部分がアルファベットの「A」の形に広がっていて、スリットはありません。
このタイプの衣装の利点は、裾幅が広いので歩行時に楽な事と、見た目が豪華に見える事、舞台の位置にかかわらず足の肌の露出を気にせずに演奏できる事です。
着用時に注意する点は、ドレスの裾がくるぶしくらいまでのロング丈のデザインの場合、座った時に自然と後ろ側にドレスの裾の布地がたまってしまうので、演奏が終わって椅子から立ち上がる時に後ろ側の布地を靴の踵で踏んでいる事があるという事です。特に、裾幅が広いデザインほど踏みやすいです。衣装の裾を踏んだまま、演奏を終えて勢いよく立ち上がると、後ろ側の布地が破けてしまいます。ロング丈のAラインデザインのドレスを着用して演奏をする時は、椅子から立ち上がる時に、ドレスの後ろ側を靴の踵で踏んでいないか気を付けて立ち上がる事をおすすめします。
マーメイドラインのロングチャイナドレス
マーメイドラインは、裾が一旦すぼまって、下に行くと広くなる魚の尾びれの形のようなデザインになっています。
マーメイドラインの特徴としては、膝のあたりで生地が一旦細くなっているので、歩く時は、どうしても歩幅が狭くなってしまいます。例えば、ホテルでの演奏時などは、控室から会場までバックヤードを長く歩く事もあり、宴席などは現場の進行を見て時間調整で呼ばれたりするので、急いで歩かないとならない事が多いです。そのような場合、重い楽器を持ちながら狭い歩幅で歩行するのは大変です。また、歩行距離は短くても、楽屋から舞台までの移動に階段がある場合も、このタイプのデザインは歩きずらので、少し大変になると思います。会場の環境を事前に知ることが出来れば、その場に適した衣装を選ぶ参考になります。
ツーピースタイプのチャイナドレス
ツーピースタイプの衣装は、上下が分かれているデザインです。上はブラウスタイプやジャケットタイプ、下はスカートやパンツスタイルなどがあり、組み合わせを変えることで印象を変化させる事ができます。
このタイプの衣装は、例えば、屋外での演奏で控室がなく着替えられない場合や、屋内でも控室がなくてトイレなどで着替えになる場合、上の部分を家から着て行って、現地で下をスカートやパンツに取り換えるだけにして着替えを簡単にできるので便利です。
ワンピースタイプのチャイナドレス
もともと、正式なチャイナドレスの丈はくるぶしでしたが、ワンピースタイプのチャイナドレスには、膝下丈やミニ丈などいろいろな長さのチャイナドレスがあります。
ワンピースタイプのドレスの利点は、普段着に近く動きやすい事です。デザインも普段着に近いので、会場に着替える場所や時間がない場合に、初めから家から着ていく事ができます。ただ、宴席などの場合、来賓の方の特徴によっては、ラフに見えてしまい失礼にあたる場合もあるので、演奏目的や会場の雰囲気を考えて選ぶ事をおすすめします。
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この記事で紹介したチャイナドレスの購入場所
ここまでは、それぞれの衣装の特徴などをご紹介しましたが、以下では、どこで購入したものかをまとめましたので参考にして下さい。
瀋陽市惠英旗袍
「惠英旗袍」は中国瀋陽市内にあります。私の留学していた瀋陽音楽学院の演奏用の制服も、このお店で作っていました。オーダーメイドも、既製品もあります。惠英旗袍の刺繍には立体感があり、作業もとても丁寧です。
「瀋陽市惠英旗袍」ホームページ⇒https://www.huiyingqipao.com/
上海辛妮服飾有限公司
「上海辛妮服飾有限公司」は上海の長楽路という通りにありました。完全オーダーメイドでドレスを作るには7日~10日ほどの日程が必要で、上海での際滞在期間中に完成が間に合わない時は、仮縫いだけして、完成したら日本に郵送してもらう事にしていました。上海辛妮服飾有限公司は伝統のある有名店なので、後から品物を送ってもらう場合にも信頼できると思い、ここでオーダーしていました。
生地は主に蘇州のものでした。綺麗な色が多く、生地も良いので気に入っていましたが、現在はホームページもなくなっており、閉店した可能性が大きいです。でも、上海の長楽路には他にもたくさんのチャイナドレス店がありますので、長楽路に行けば、オーダーメイドにも既製品の購入にも困らないと思います。
綺麗坊婚紗礼服製衣
綺麗坊婚紗礼服製衣は、中国蘇州市にあるお店です。婚礼用の花嫁衣裳や靴、装飾品などを取り扱っていますが、チャイナドレスも既製品、オーダーデザイン共にたくさんあります。住所は、蘇州市金阊区虎丘海涌坊104号です。蘇州の虎丘と言う地区は、このお店の他にも、たくさんのチャイナドレスのお店があります。シルクの小物や、刺繍のストール、バッグ、アクセサリーなども豊富です。
チャイナドレスとアオザイKOLO
「チャイナドレスとアオザイKOLO」はインターネット通販のお店ですが、自分で身体の数か所を計測できれば、数値を入力してオーダーメイドもできます。生地が厚く丈夫なので、繰り返し着ても毛羽立たず、耐久性があります。
「チャイナドレスとアオザイKOLO」ホームページ⇒http://www.kolo-online.com/
チャイナハウスカモメ
「チャイナハウスカモメ」は、横浜中華街にあるお店です。下の写真は既製品ですが、オーダーメイドもやっています。インターネットの通販もできるようです。
「チャイナハウスカモメ」ホームページ⇒https://www.f-kamome.co.jp/
演奏用のチャイナドレスの選び方のまとめ
中国琵琶の演奏をする時は、他の多くの仕事と同様にTPOに合った服装の選択と、それぞれのデザインの特徴を知って、演奏する場所の環境にあわせて選択する事が必要になります。
中国琵琶の演奏は、思いのほか運動量が多く、舞台によってはライトが熱いので、演奏中に汗をかく事がありますので、私は衣装を購入する時は、汗をかいてもなるべく目立たない色の布地を生地を選択するようにしています。
また、演奏時に左腕を高く上げる事が多いので、肩の部分がきついデザインだと左腕の動きの妨げになります。衣装を購入する時は、試着の時に演奏の時にする動きを一通りしてみて、肩や腕の周囲などきつくないかと、楽器を持って座った時に、太腿の部分の幅が狭すぎないかを確認すると良いでしょう。太腿の部分の布地幅がタイトすぎると、立ったままなら問題なくても、座った時に縫い目はじけてしまいますので、立った時だけでなく、椅子に座ってみる事も必要です。
演奏用にチャイナドレスを購入する際は、デザインの特徴や自分が演奏する時の条件などを考えて購入されると、失敗が少なく、演奏時のストレスも少なく演奏に集中できるのではないかと思います。
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横浜中華街のチャイナハウスカモメで中国琵琶演奏用にチャイナドレスを購入した時の記事です。この情報は、2019年11月1日時点のものになります。感染症対策や試着、オーダーメイド方法、価格その他は直接店舗 ...