楽器について

中国琵琶を作る時に使われる木材(紫檀・紅木・花梨)と琴頭の装飾について

この記事は、中国琵琶を作る時に使われる代表的な木材「紫檀」「紅木」「花梨」の主な特徴と、琴頭(qin tou)の装飾部分の素材と質感の違いについて書いています。

中国琵琶の構造と使用される木材

中国琵琶の楽器本体の背板と呼ばれる共鳴部分は「紫檀」「紅木」「花梨」などの硬い木で作られています。前面の面板の部分は桐で作られることが多いです。フレットとなる部分の上部(相)は動物の骨や角、下の部分(品)は竹でできています。例えば、「紫檀の楽器(紫檀琴 zi tan qin)」という場合、その楽器の背板が紫檀で作られているという事を指しています。

中国琵琶の各部の名称は下の図を参考にして下さい↴
中国琵琶の構造の写真
中国琵琶の音色を左右する要素は、楽器本体の他には弦があります。古代の中国琵琶の弦は、大きな水鳥の長い脚の健や動物の腸、絹糸などから作られていましたが、現代ではスチール製が一般的です。いろいろなメーカーから販売されていて、自分の好みで張り替えることができます。
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中国琵琶を作るための木材「紫檀」「紅木」「花梨」

紫檀(zi tan)の中国琵琶

紫檀(したん)のことを中国語で「紫檀=zi tan(ズータン)」と言います。紫檀はその漢字の示すように、紫がかった色合いをもっています。自然のものなので木によっても色合いなどには違いはありますが、赤紫褐色から紫色を帯びた暗褐色に黒紫色の縞模様の木目が入っています。ローズウッドと呼ばれることもあるようです。木質は緻密で磨くと美しい光沢が生まれます。丈夫な為に、加工する時は難しいですが、耐朽性はあります。楽器の他にも、高級家具材、唐木細工、ナイフの柄などにも使われます。
紫檀の硬い木質は、音色にも表れてくるように感じます。それぞれの人の感じ方に違いはあると思いますが、紫檀の楽器はとても澄んだ冴えるような響きがあります。下の写真は私の使っている紫檀の中国琵琶です↴
紫檀琵琶紫檀琵琶
この写真の楽器は、塗料(ニス)でコーティングをかけているので、本来の木の色よりはより黒く見えていると思います。価格帯で言うと中国琵琶の中でも高めの素材となります。現在は、地球環境や気温の変化により木材資源が枯渇していて、良質な木材自体が希少となっているので、楽器の価格もだいぶ値上がりしたと現地の師匠や友人が話していました。

紅木(hong mu)の中国琵琶

紅木(こうき)のことを中国語では「紅木=hong mu(ホンムー)」と言います。マホガニー、コウキシタンとも呼ばれることもあります。紅木はその漢字の示すように、赤みがかった色合いをもっています。リップルマークと呼ばれる、板面に現れるさざ波の様な美しい光沢のある模様が特徴的です。高級家具などにも使われますが、日本では古くから三味線の棹・琴の張り板などに使われていました。紅色の染料を採取する用途にも使われるそうです。木質は硬く、狂いが少ない木のようです。
私の感じ方ですが、紅木の楽器の音色は共鳴が長く、明瞭な中にも木の持つやわらかい響きがあるように感じます。下の写真は私の使っている紅木の中国琵琶です↴
紅木琵琶紅木琵琶
価格帯は、一般的に紫檀よりは少し安くなりますが、品質によってはその限りではありません。希少な紅木は紫檀よりも高い場合があります。紅木も紫檀などと同様で希少になってきているため、良い物は手に入りずらくなっていると言えます。

花梨木(hua li mu)の中国琵琶

花梨(かりん)のことを中国語では「花梨木=hua li mu(ホアリームー)」と言います。色は、一般的に明赤色から暗色の縞を伴った暗い赤色ですが、産地によっては黄色いものや強い赤色のものもあるようです。木肌の表面は美しく、綺麗な光沢があります。木質は硬くて丈夫ですが、加工は比較的容易なようです。狂いも少なく割れる事もあまりありません。和太鼓の木の部分や三味線なども花梨で作られています。
音質については、私の印象ですが、わりと柔らかい音に感じます。下の写真は私の使っている花梨の中国琵琶です↴
花梨琵琶花梨琵琶
価格帯としては、紫檀や紅木よりは安めになると思いますが、だからといって花梨の中国琵琶が楽器として音色が劣るというわけではありません。

中国琵琶の琴頭の装飾

中国琵琶の一番上の部分を琴頭(qing tou=チントウ)と呼びます。音色には直接関係のない装飾部分となります。昔は、象牙などで飾られていたこともあったようですが、現在では牛の角や動物の骨、軟玉という玉石などが使われています。また、人工の練り物や木材の彫刻で作られていることもあります。
役割は装飾だけなので、琴頭の材質や形状で音質が変わることはありません。ただ、美しい楽器を使うのは嬉しいものです。自分の気に入ったデザインの楽器を使うことは、練習したい気持ちや大事にしたい気持ちにもつながると思うので、楽器を選択する時に琴頭の装飾が好きかどうかも判断に入れても悪くはないと思います。

軟玉(石)の素材

軟玉(なんぎょく)という石を加工して龍が彫刻されています。少し青みがかって光沢があります。
紅木琵琶琴頭

ラクダの骨の素材

時々、象牙ですか?と聞かれることもあるのですが、ラクダの骨で龍を彫刻した装飾です。
紫檀琵琶琴頭

人工の素材

これは、人工の練り物の素材で作られています。見た感じはラクダの骨に近いと思います。花の彫刻です。この楽器の琴頭は上部が角のようになっているデザインですが、上海や蘇州など南の地方の楽器に多く見られる形です。上部が丸くなっているものは、北よりの北京などで多く作られています。
雑木琵琶琴頭

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中国琵琶を作る時に使われる木材(紫檀・紅木・花梨)と琴頭の装飾についてについてまとめ

この記事では、中国琵琶を作るのに使われる代表的な木材「紫檀」「紅木」「花梨」について書きましたが、参考にした資料や教本の中には「黒檀」で作った楽器もあると書いてありました。ですが、私は今まで、実際に楽器屋さんで黒檀の中国琵琶を売っているのは見たことがありません。また、ここでは紹介しなかったものには、雑木という種類のはっきりしない木で作られた楽器もあります。

使われる木材によって、音質の特徴はそれぞれありますが、音色はどれ一つ同じものはありません。また、楽器は、自分の手元に来てから弾いて育てていくものです。使っていくうちに、初めの頃とは違う音色に変化していきます。天候によっても音色が変化します。何年も使っていくうちに、自然と自分の楽器がどのような時にいい音が出るのか、わかってくると面白いです。私の、紅木の中国琵琶は、蒸し暑くて雨の降る前などに非常に良い音が出ます。

近年、楽器を作る為に使われる質の良い木材が、急速に減少してきているという事は、演奏家をしている友人や、師匠からも聞いています。これから中国琵琶を習い始めようと思っている方が、もしも縁あって質のよい楽器と巡り会って手に入れることができたら、貴重な木材でつくられた楽器は、金銭的な価格に関わらず、ひとつひとつの楽器がかけがえのない財産なのだと思い大切にして頂けたらと思います。

中国琵琶の写真
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中国琵琶(pipa)をご紹介します! 私は、2001年~2003年まで中国瀋陽音楽学院に留学し、 民族器楽科の劉剛氏から中国の伝統楽器である中国琵琶を学びました。 日本に帰国した後は中国琵琶の演奏と講 ...

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